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同族会社間・役員と法人の不動産売買に鑑定評価は必要か?【よつば不動産鑑定】

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「役員名義の不動産を法人名義に変更したい」というニーズは大変多いです。
ただし、法人と役員、同族会社間、親族間の不動産売買では、取引価格を慎重に決めることが重要です。
同族間売買は、自由な値段で取引できるため、税務署が厳しく目を光らせています。
税務署から「安すぎる・高すぎる」と判断されたら、予想外の税金を課税されてしまうかもしれません

以下のような不動産売買を検討している方は注意が必要です。
・同族会社(関連会社)との不動産売買
・法人と役員との間の不動産売買
・親子、親族との売買
・事業を法人化するとき(=事業が軌道に乗ったので法人成りしたい)
・アパート経営の法人化(=資産管理会社を設立)
・医療法人化で医師の個人資産の名義を変更したい

相続税や法人税などの節税も考えて不動産を取引するとき、売買価格をどのように決めたらいいのか迷う方が多くいらっしゃいます。
なるべく高く、または、なるべく安く売買したいとき、税務署対策はどうしたらよいのでしょうか。

相続税路線価などを使うのは、あくまでも簡便法です。
路線価を根拠にすると、場合によっては時価と乖離することがあります。

税務署対策として安全を求めるなら、不動産鑑定評価を取得すると安心です。
とはいえ、すべての同族間売買で必ずしも不動産鑑定が必要ではありません
不動産鑑定にはコストがかかるので、鑑定を取得すべきかどうか見極める必要があります。

この記事では、次の点を詳しく解説します。
・同族間売買、法人と役員間の売買、親族間売買などでどのような課税が発生するのか
・不動産鑑定以外で時価を求める方法
・土地のみ、建物のみを売買する際のポイント
・直接売買の方法と流れ

予想外の税金で損をしないために、ご参考にしてください。

1. 同族間売買、親族間売買のリスク

まず、特別な関係者同士の不動産売買のリスクと注意点を見ていきます。

1-1.なぜ同族間売買は注意が必要なのか

第三者間での売買なら、高く売りたい売主と、安く買いたい買主との間で合理的に価格が決まるので、原則的には税務上の問題が起こりません。

ところが、役員と法人との売買では、価格が自由に決められる状況にあります。
同族会社、親族間の売買でも価格の融通が利きます。
一般的には、相場よりも安い値段で取引しようとすることが多いようです。

そのため、このような関係者間の売買には税務署が目を光らせています
売買価格が否認されると、予期せぬ税金が課されたり、加算税・延滞税がかかる可能性もあります。
課税リスクを回避するためには、慎重に売買価格を決めることをおすすめします。
適正な時価を証明したいときには、不動産鑑定評価を取得すると安心です。
実務では相続税路線価なども使われるので、3章で時価の算出方法をいくつかご紹介します。

1-2.会社役員と法人間の売買の注意点

役員と法人との間の売買取引は、「利益相反取引」にあたります。
そのため、まずは取締役会(または株主総会)の承認などの会社法上の手続きも必要です。
売買の目的が明確で合理的であるか、ということも重要です。
節税目的で時価と異なる価格での売買が行われれば税務上の問題になるのは当然といえます。

1-3.「同族間売買」の対象は幅広く考えておく

注意すべきは、法人とその取締役の取引だけではありません。
役員を務める関連会社はもちろんですが、社長の血族、姻族の会社も含めて、幅広く考えておいたほうがよいと言われています。
このような会社にも税務調査が及ぶ可能性は否定できません。

2. 時価と大きく離れた金額で売却した場合の税務上の影響

時価よりも極端に安く売買することを「低額譲渡」といい、課税リスクが大きくなります。
逆に、極端に高く売買した場合に問題になるケースもあります。
買主・売主が法人なのか個人なのかによって、どのような税務上の問題が生じるのか一般的なケースを以下にまとめました。

2-1.法人が役員に安く売却・法人が役員から高く購入

法人側:時価との差額が役員給与とみなされるおそれがあります。そうなると定期同額給与に当たらないため、損金不算入で法人税の課税対象になります。
買主側:売買価格と時価との差額が給与所得とみなされ、所得税の課税対象になります。

2-2.役員が法人に安く売却

役員側:時価の2分の1未満なら、時価で譲渡したものとみなして扱われます(所得税法のみなし譲渡課税)。そうなると、時価で譲渡所得税が計算されます。
買主の法人側:売買価格と時価との差額は受贈益として法人税の課税対象となります。

2-3.法人から法人へ安く売却

売主側:時価で譲渡したものとみなされ、時価との差額は寄付金として一部が損金不算入となり法人税課税されるおそれがあります。
買主側:時価で購入したものとみなして、時価との差額が受贈益として法人税の課税対象となります。
(グループ法人税制を除く)

2-4.個人から個人に安く売却

売主側:時価で譲渡したものとして譲渡所得税が課税される可能性があります。
買主側:売買価格と時価の差額を贈与とみなして、贈与税が課税されるおそれがあります(みなし贈与:相続税法第7条)

みなし贈与とは、時価よりも極端に安く売買したと税務署が判断すると、時価よりも安い部分を贈与とみなして、贈与税が課税されるしくみです。
例えば、「時価よりも1,000万円安く売ってもらったなら、1,000万円贈与してもらったのと同じですよね」という考え方です。
詳しくは国税庁ホームページをご覧ください。
「No.4423著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」

3. 「時価」の算定方法は?路線価を使う方法や鑑定評価など6通り

税務上、問題とならないためには「時価」を見極めて取引する必要があります。
また、課税リスクだけでなく、人間関係にわだかまりが残らないように、納得できる方法で時価を算出することが大切です。
これからご紹介する6通りの算出方法のうち、鑑定評価額以外は簡便法です。
簡便法でも問題ないケースもあるので、以下をご参考に、鑑定評価を取得するかどうか検討してみてください。

3-1.相続税路線価を使う方法

実務では相続税評価額を使って評価されることが多いですが、適正時価と一致するとは限りません。
相続税路線価は税務署が決めているルールではありますが、「相続税・贈与税の計算に使うためのもの」なので、法人税や所得税の計算でも認められるとは限りません
「相続税路線価を0.8で割り戻すと時価が出せる」という指標が一般に浸透しつつあり、概ね妥当なケースも多いのですが、時価の水準と一致しないこともあります。また、土地の個別性に応じた適切な補正も必要です。
路線価による評価は一定の説得力はありますが、それが妥当なのかという検証は必要です。

3-2.地価公示・地価調査を使う方法

地価公示や地価調査は、取引価格の指標となりますが、対象地のすぐ近くに評価ポイントがあるとは限りません。
公示地等と対象地との地域の格差や個別性(形状、接面道路、面積、地勢など)を補正する必要があるため、一般的に時価の算出には利用しにくいです。

3-3.固定資産税評価額を使う方法

固定資産税評価額は最も入手しやすく、使いやすいのですが、時価と一致するとは限りません。
土地は公示地価の約70%の水準に設定されているため、土地の固定資産税評価額÷70%として計算する方法があります。
建物は新築でも建築費の50~60%なので、築年数が新しいと評価額が割安なことが多いです。
逆に古い建物では、経年減点補正率の下限が20%でそれ以下に下がらないため、実勢価格よりも割高なことがあります。

3-4.売買実例価額に基づく方法

近隣の売買事例を基にして時価を算出する方法です。合理的な方法ではありますが、類似性の高い売買事例を探すのは困難です。

3-5.不動産仲介業者による無料の査定書

地元の相場を熟知している不動産業者に査定してもらえば、取引価格を決めるために大いに参考になります。
ただし、税務署や裁判では、不動産仲介業者による査定書は採用されません。
「売却を依頼してほしい」「買取したい」など様々な思惑で査定額が変わることがあるため、時価の公的な証明書類としては認められません。

3-6.不動産鑑定評価書

適正な時価であることを確実に示すなら、不動産鑑定評価書を取得しておくと安心です。
不動産鑑定士による鑑定評価書は、税務署を納得させられる正式な疎明資料です。
適正価格が問題になるような場面では、大きな費用対効果があります。

ただし、鑑定評価には費用がかかるので、「すべての同族間売買・親族間売買で鑑定評価を取得すべき」とは言えません
路線価評価と時価が同じくらいならば、わざわざコストをかけて鑑定評価を取得する必要がないからです。
路線価と時価が乖離しやすい都心や商業地、収益を生む不動産や、相場のわかりにくい市街化調整区域などでは鑑定が必要かどうか検討したほうがよいと思います。

また、金額の大きい不動産は課税されたときのダメージが大きいので、税務調査に備えてリスクヘッジとして鑑定評価を取得しておくという考え方もあります。
よつば不動産鑑定では、正式依頼前に概算価格の査定もできますので、お気軽にご相談ください(税理士の先生からのご相談も歓迎です)。

【コラム:税理士さんはどの方法をオススメする?】

実務では相続税路線価を補正して使うケースが多いようです。
適正な売買価格について、税理士が有料の鑑定評価の取得を勧めるケースは多くありません。
路線価評価が時価に近いというケースも多いのですが、顧客に費用をかかるものを勧めるのをためらってしまう税理士さんが多いようです。
顧客が「念のために鑑定評価を取得しておきたい。リスクヘッジしたい」という意向があるなら、それに反対する税理士さんはほとんどいないはずです。

4. 同族間で「土地のみ」「建物のみ」を売却するときの注意点

土地と建物の両方を役員個人が所有しており、土地や建物だけを法人に売却するようなケースもよく見られます。
院長先生(または先代の院長先生)の所有する不動産を、医療法人の名義に変えるケースや、資産管理会社の名義に変えるケースも増えています。
このようなときには、土地だけ、建物だけの鑑定評価を行うこともあります。

建物を売却するときには消費税が関係するので、院長先生が課税事業者なのか、医療法人を設立したばかりなのか等も考えて、建物を売却するタイミングを決める必要があります。
なお、土地と建物の名義が別になると、地代をいくら支払うのかが次の課題になります。
このときの適正な地代についても、顧問税理士によく相談してください。

5. 直接売買の具体的な方法と流れ

通常の第三者との売買ならば不動産会社に仲介を依頼しますが、関係者との直接売買では、次のような流れで手続きできます。

(1)節税を考えるなら税理士へ相談
節税も考えて不動産を売買する場合には、まず顧問税理士へご相談ください。
売り手側と買い手側、それぞれの税金を考える必要があります。
法人税、相続税、所得税、消費税など複数の税金がからむケースもあります。
(顧問税理士がいない場合は、当社から信頼できる税理士のご紹介もできます)

(2)時価の判断が不安なら不動産鑑定士へ相談
金額が大きい不動産で不安に思う場合や、慎重を期したい場合には、不動産鑑定士にご相談ください。
取引価格が時価と大きく異なるおそれがあるかどうか、鑑定を依頼するかどうか迷っている段階で相談してみるのも一つの方法です。

(3)株主総会・取締役会議事録を作成
役員の所有する不動産を会社が購入する場合など、利益相反取引に該当するときは株主総会や取締役会を開いて承認を受けて議事録を作成します。
これを不動産の移転登記申請の際に添付します。

(4)売買契約書の作成
売買契約書は自分で作成してもかまいませんが、不動産会社や弁護士等に契約書の作成を依頼すると安心です。不動産会社に通常の仲介を依頼する場合は、売買価格の3%+6万円を上限とする仲介手数料がかかりますが、売買契約書の作成だけならもっと安くすむのが普通です。

(5)登記申請
司法書士に依頼して移転登記を申請します。
法務局での手続きには2週間ほどかかり、登記簿上の名義が変更されます。

まとめ

役員と法人、関連会社間、親族間の不動産取引では、価格を自由に決めることができます。
そのため、時価とかけはなれた値段で取引していないかどうか、税務署は厳しくチェックし、場合によっては予期せぬ税金が課税されます。

課税リスクを回避するには不動産鑑定を取得すると安心ですが、相続税路線価を使った評価でも問題がないケースもあります。
金額の大きい不動産の場合や、取引価格に自信が持てない場合はご相談ください。

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