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地歴調査でリスク回避!自分で古地図を調べる方法【不動産鑑定士が解説】

地図・調査

地歴調査とは、土地が過去にどのように利用されていたのか履歴を調査することです。
地歴調査の主な内容は、古地図(過去の地図)や登記簿の調査です。
地歴調査を行えば、土壌汚染の存在する可能性が高いかどうか判定したり、地形から地盤の強さを推定したり、心理的抵抗感がないかどうか調べることができます。

地歴調査は、土壌汚染対策法や条例により義務付けられているケースもあります。
また、土壌汚染の存在や地盤が弱いことが後から判明すると、想定外の費用がかかってしまうかもしれないので、リスク回避のために自主的な地歴調査を行う場合も増えています。
建物は建て替えできますが土地は簡単に変えることができないので、不動産の購入時は慎重に検討することが大切です。

売買に際して、良心的な不動産会社ならば一定の地歴調査を行ってくれるはずです。
ところが、工場の跡地なのに知らないふりをしたり、指摘をしても「周りも住宅地なので大丈夫ですよ」と答えにならない回答でスルーしようとすることもあります。場合によっては売主・買主から地歴調査や土壌調査の実施を求めることも必要でしょう。

専門業者による地歴調査費用(フェーズ1)は10~20万円が相場です。
費用を抑えたい場合やスピードを求める場合は、簡易地歴調査(フェーズ0.5)を依頼する方法もあります。
この記事では、自分で地歴調査する方法や、依頼先の違い、土壌汚染対策法の調査義務について解説していきますので、ご参考にしてください。

1.地歴調査とは?目的と具体的な方法

まず、地歴調査の目的や内容について詳しく解説します。

1-1.地歴調査の目的

地歴調査を行えば、土地の過去の利用状況がわかります。
それによって、次のような役に立ちます。

(1)土壌汚染が存在する可能性を判定する
地歴調査の結果、例えば薬品工場やガソリンスタンド、クリーニング店があったことが判明した場合は、土壌汚染の可能性が否定できません。
その場合は、土壌サンプルを採取して分析する詳しい調査に進むことを検討します。
売買の際には、実際に土壌汚染に関する責任を契約条項に定めたり、土壌汚染の除去を行ってから取引を行うことで不測の損害を回避できます。

(2)地下埋設物の存在する可能性を推定する
地歴調査の結果、例えばガソリンスタンドであった場合には、地下に貯蔵タンクが埋まっている可能性が否定できません。
そこで、売買の際には地下埋設物が存在しないかどうか調査を行ったり、問題があった場合の費用負担を売買当事者で取り決めることでトラブルを防ぐことができます。

(3)地盤の強さや水害の危険度を推定する
地歴調査の結果、田や畑を造成した土地や海岸の埋め立て地であれば、地盤が弱い可能性があるとわかります。
実際に地盤調査を行ってみなければ地盤の強さはわかりませんが、初めからそのような土地を避けたいと思う人の場合は購入するかどうかの重要な判断材料になります。

(4)心理的な抵抗がないかどうかわかる
土壌汚染がないことはわかっていたとしても、過去に工場や最終処分場があった土地にマイホームを建てるのを避けたい方もいるはずです。

このように、地歴調査を行えば、金銭的リスクを避けるだけでなく、安心して土地を売買することができます。

1-2.地歴調査のフェーズⅠとフェーズⅡの違い

土壌汚染調査には次のような種類があります。

「フェーズ0.5」とは、土壌汚染対策法に規定されている「フェーズ1」よりも簡易的な地歴調査です。費用を抑えて短期間で地歴を調べます。

「フェーズⅠ(フェーズ1)」とは、土壌サンプルを採取しない地歴調査のことです。地歴調査で土壌汚染の恐れが高ければ、フェーズⅡに進みます。

「フェーズⅡ(フェーズ2)」では、土壌サンプルを採取して化学分析を行います。まず表層土壌調査を行い、汚染が確認されたら深い地点までボーリング調査を行います。

「フェーズⅢ(フェーズ3)」は、土壌汚染の除去や浄化などの対策工事です。

1-3. 地歴調査の具体的な方法

「フェーズⅠ」にあたる地歴調査の具体的な方法は、次のとおりです。
一言で「地歴調査」といっても調査内容は様々です。

(1)古い住宅地図や過去の航空写真による調査
古い地図や航空写真を収集することで、建物の有無や会社名などがわかることがあります。

(2)登記簿の調査
土地の登記簿に記載された所有者名から用途を推定したり、土地の「地目」を確認することで過去の用途が判明することがあります。
また、現在は残っていない滅失した建物の「閉鎖登記簿」を取得して用途などを調べます。

(3)工場などの届出の調査
「土壌汚染対策法」「水質汚濁防止法」「下水道法」などの届出を確認することで、汚染物質を扱っていた地歴が判明することがあります。

(4)関係者や周辺住民へのヒアリングと現地調査
土地の旧所有者や、周辺に古くから住んでいる人にヒアリングを行って、用途などが判明することもあります。

2. 地歴調査が義務のケースとは?土壌汚染対策法を確認

「地歴調査」は法的に義務付けられているケースもあります。
土壌汚染対策法による調査義務があるのは、次のような場合です。
・有害物質を使用していた工場(有害物質使用特定施設)を廃止する場合
・3,000平米以上の土地の形質変更を行う場合
・土壌汚染により健康被害のおそれがあるとき

上記のほか、都道府県や市町村の条例で土壌汚染調査が必要なケースもあります。

3. 自分で地歴調査したい!古地図、航空写真、登記簿の調査とは?

地歴調査は、ある程度までは自分でも行うことができます。
自分で調査してみたいという方は、ご参考にしてください。

3-1.古地図の調べ方

国会図書館に行けば、様々な年代の古地図を探せます。
また、市立図書館や都道府県立図書館でも、該当エリアの過去の地図を閲覧できることが多いです。
都道府県立図書館には、昭和、平成など様々な年代の住宅地図が所蔵されている可能性が高いです。
ただし、係員に依頼して書庫等から地図を出してもらう必要があるため時間がかかるかもしれません。
「蔵書検索」などで地図の有無をあらかじめ確認の上、時間に余裕を持って図書館を訪れてみてください。

市町村の図書館に所蔵されているのは、江戸時代の古地図や、平成以降の住宅地図のみの可能性が高いです。
中間にあたる昭和の年代の地図などは手に入りにくい場合があります。

また、「今昔マップon the web」のように、古い地図をウェブ上で閲覧できるサイトもあります。

3-2.航空写真の調べ方

国土交通省・国土地理院のホームページで、過去の空中写真を確認することができます。
国土地理院ホームページ
ピンポイントで場所を特定するのは簡単ではありませんが、一帯が田や山林といった地域全体の様子は判明する可能性が高いです。

3-3.登記簿の調べ方

登記簿謄本(登記事項証明書)は不動産関係のお仕事をしている方でなければ馴染みがないかもしれません。

まず、調べたい土地の「地番」を確認します。
住居表示と「地番」は異なることがあるのでご注意ください。
地番がわからなければ、法務局に備え付けのブルーマップを見れば地番を調べることができます。
現在の土地の登記簿謄本を取得すると、過去に土地が分筆・合筆されていることがあるので、過去の地番の登記簿も取得して地目を調べます。

次に、建物の閉鎖謄本(閉鎖登記簿)を取得します。
すでに存在しない建物の登記は閉鎖されているので、閉鎖謄本を取得して内容を調べます。
ただし、過去の建物が登記をしていなかった場合には、閉鎖謄本が出てこないので地図から調べるしかありません。
分筆などで地番が途中で変わっている場合には、過去の地番を記載して閉鎖謄本を申請します。
取り壊したときに登記の手続きがされていない場合には、建物の登記だけが残っている場合もあります。
土地や建物の最新の登記簿謄本は電子化されてインターネットで請求できる時代になっていますが、コンピュータ化前の古い閉鎖謄本は管轄の法務局に行かないと取得できません。

4. 地歴調査を専門家に頼む場合の依頼先と費用

自分で地歴調査する方法をご紹介しましたが、かなり手間もかかりますし、不動産調査に慣れていないと登記簿の調査などは難しいかもしれません。
そこで、地歴調査を専門家に頼んだほうがいいのはどのような場合なのか、また、依頼先や費用について解説します。

4-1.【土壌汚染リスクが高い場合】土壌汚染調査の専門会社に依頼する

土壌汚染の可能性が高い場合には、土壌汚染調査の専門会社に依頼するのがおすすめです。
具体的には、
・土壌汚染対策法や条例による調査義務がある土地
・工場、作業所、倉庫が現在建っている土地
・工場などの跡地であると判明している土地
・工業団地など、土壌汚染リスクを否定できない業種が集まるエリア
・不動産証券化のようにリスクを排除する必要がある高額物件

土壌汚染調査の専門会社は、土壌汚染対策法に基づく指定調査機関を選んでください。
環境省のホームページで検索できます。
専門企業に依頼する場合、土壌サンプルを取得しない「フェーズⅠ」の地歴調査の場合は10万円~20万円くらいかかります。
ヒアリング調査・現地調査の有無や地積などによって費用は変わるので、見積もりを依頼するとよいでしょう。

専門企業に地歴調査を依頼して、土壌汚染の可能性が高いと判明した場合には、土壌サンプリング調査の「フェーズⅡ」に進み、その後の浄化対策工事費用の見積もりまでスムーズに進められます。

4-2.【売買に伴う場合】不動産会社に相談する

すでに購入が決まっている土地ならば、不動産会社に地歴を聞いてみてください。
土地の売買契約を締結する際の「重要事項説明」では、土地の履歴もある程度調べて説明してもらえるのが一般的です。
専門企業に依頼した場合ほど詳細ではありませんが、「昔は田だった」といった大まかな情報は得られるはずです。

これから売却しようとする土地に土壌汚染の可能性がある売主の方は、不動産会社と相談の上、土壌汚染調査の専門会社に依頼する必要があるかどうか検討してください。
将来、土壌汚染が判明すれば契約不適合責任を追及される可能性もあるため、土壌汚染リスクについて契約で取り決めておくことが大切です。
近年では、法律上の調査義務がなくても、売買に際して自主的に地歴調査を行うケースが増えています。

 

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