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「不動産鑑定」と査定の違いは?費用は?【鑑定士コラム】

不動産鑑定

「不動産鑑定」と「査定」はどう違うのですか、というご質問を受けることがあります。
どちらも、不動産の値段を知るという意味では同じです。
違いを一言でいうと、

・不動産鑑定・・・不動産鑑定士有料で行う。適正価格を証明したいときに利用する。
・査定・・・不動産会社(宅地建物取引士)が無料で行う。売却見込み額を知りたいときに利用する。

鑑定と査定は、使う目的が違います。
個人の方がご自宅などの不動産を売却するときには、普通は、不動産会社による無料の査定を受ければ十分です。
でも、以下のようなケースでは、鑑定評価が役立つケースがあります。
・税務署や裁判所、金融機関に鑑定評価書を提出するとき。
・特殊な不動産(ゴルフ場、病院、工場、広大な土地など)を売買するとき。
・相続や離婚など、公平な値段で不動産を分けたいとき。
・親族、知人、関連会社間の不動産売買。

この記事では「鑑定と査定の違い」「費用」「鑑定が役立つケース」「価格算出方法」などを詳しく解説していきます。
不動産の売買を予定している方はどうぞご参考にしてください。

なお、不動産鑑定の費用(料金)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「不動産鑑定の費用はいくら?相場と料金表【よつば不動産鑑定】」

1.不動産の「鑑定評価」と「査定」の違い

まず、不動産の鑑定評価と査定の違いについて解説します。

1-1.不動産の鑑定評価とは、有料の証拠書類

「不動産鑑定評価書」は、土地や建物等の適正な価格を表示するのが目的です。

鑑定評価書は、税務署や裁判所に提出することもできる、正式な書類です。
第三者に対して、客観的に不動産の値段を示す必要があるときに使われます。
不動産鑑定評価書を作成できるのは、国家資格を持つ不動産鑑定士(士補)だけです。

【不動産鑑定評価は有料のサービス】
不動産の鑑定評価の費用(報酬)は、最低でも10万円以上はかかります。
規模が大きかったり、権利関係が複雑な不動産ほど報酬は高くなります。
不動産鑑定会社は独自に報酬体系を決めているので、会社によって費用は異なります。

【不動産鑑定評価は1か月前後かかる】
不動産鑑定評価書の依頼から納品までは、2週間から1か月程度かかるのが一般的です。
複雑な案件ほど納期は長くなります。
鑑定評価書には、不動産の評価額や計算式だけでなく、その結論に至るまでの地域分析などが記載され、20ページ以上の冊子になります。

【不動産鑑定士による査定とは】
ちなみに、不動産鑑定士による「査定」というのも存在しますが、これは鑑定評価の一部を簡略化したものです。
名称は「査定書」「調査報告書」など鑑定事務所によって異なります。
不動産鑑定士による査定は有料で、不動産会社による無料査定とは異なるものです。
「税務署などに出す必要はないけれど、売買を決定するための社内会議で使いたい」といった場面で利用されます。

1-2.不動産の査定とは、売買のための無料サービス

不動産会社による査定は、「売却見込み価格」を無料で出してくれるものです。
「うちの会社に仲介を依頼してもらえれば、これくらいの値段で売れるはずです!」という意味です。
あくまでも見込み価格なので、査定額で売れるとは限りません。
査定額は不動産会社によって違うので、複数の会社に査定を依頼する人も多いです。

【査定はなぜ無料なのか】
不動産会社は不動産売却の仲介を依頼されると、売主と「媒介契約」を締結し、買主を探して売買契約を締結するサポートを行います。
仲介依頼の時点では報酬を請求できず、売買が正式に成立したときにはじめて仲介手数料が発生します。
そもそも不動産会社は仲介を依頼してもらわないとビジネスにならないので、仲介を依頼してもらうための営業の一環として無料で査定を行います。
このように、不動産会社が無料査定を行う目的は仲介を依頼してもらうことですから、「できるだけ高めの査定額を提示して媒介契約を取りたい」という思惑が働くこともあります。

【仲介と買取の違い】
不動産会社の査定額は「仲介」と「買取」で異なります。
「仲介」は、不動産を買ってくれる第三者を不動産会社が探します。「買取」は不動産会社が直接、不動産を買ってくれます。「買取」は不動産会社の仕入れなので、買い取り額は安くなります。

【査定は1週間程度】
不動産会社による無料査定には、現地を見ない「机上査定」と、現地を見てから詳細に査定する「訪問査定」があります。
机上査定なら数日以内、訪問査定でも1週間前後で査定書がもらえます。

2.不動産の鑑定評価が役立つケースとは

鑑定評価が役立つのは次のようなケースです。

2-1.個人の場合

(1)相続税の節税のため
相続税の計算では、通常は国税庁の定める「相続税路線価」を元にして不動産を評価します。
ところが場合によっては、この路線価評価が時価よりも高くなっており、鑑定評価を取得したほうが相続税が安くなるケースがあります。
鑑定評価書を取得したほうが有利になるかどうかはケースバイケースなので、当社では税理士と連携してご相談に乗っています。

(2)公平な相続、離婚による財産分与のため
鑑定評価書を取得すれば、保有する不動産の価値を正しく知った上で資産の分け方を決められます。
無料の「不動産査定」ではなく、中立な立場の不動産鑑定士による「鑑定評価書」の信頼感がトラブル防止に役立ちます。

(3)極端に安すぎる値段で売ることによる贈与税が不安なとき
不動産を時価よりも極端に安すぎる値段で売却すると、贈与とみなされ、贈与税の課税対象になってしまうことがあります。
親族間や知人間での不動産売買では不動産会社を通さないこともありますが、鑑定評価を取得すれば適正価格を把握できるので安心です。

(4)相場がわかりにくい不動産の取引
特殊な不動産を売買するときには、そもそも相場がわかりにくいので、鑑定評価書があるとスムーズに交渉できる場合があります。
また、相場よりも安すぎたり高すぎたことが後日になって判明し、トラブルになることを避けられます。

2-2.法人の場合

(1)関連会社間の売買
関連会社間での売買では、安すぎる値段で売買することで税金上、不利になる恐れがあります。
そこで、適正価格で売買したことを客観的に示すために鑑定評価書が役立ちます。
法人と役員間の売買も同様です。

(2)現物出資、代物弁済、財務諸表の作成など
不動産を現物出資するときや、代物弁済するときに、鑑定評価書を取得すれば適正価格を証明できます。
また、法人が所有する投資用不動産については、貸借対照表に記載・注記するための鑑定評価が必要になるケースがあります。

(3)担保評価として
不動産の取得資金について融資を受ける場合、通常は金融機関が独自の方法で担保価値を査定するので鑑定は必要ありません。
ただし、特殊な不動産や、融資期間が法定耐用年数を超える場合などに、鑑定評価を取得して参考書類として提出することで審査を通過できることがあります。

ここに挙げた以外にも、地代のトラブル、不動産の分割や交換など、鑑定評価は様々な場面で役立ちます。
当社では、「鑑定を取ったほうがよいかどうか迷っている」というご相談もお受けしています。

3.鑑定や査定の具体的な方法

「不動産鑑定」と「不動産会社による無料査定」には共通点もあります。
どちらも「不動産の値段を出す」という点は同じなので、似たような計算方法で値段を算出していきます。
不動産の価格を出す方法には、大きく3種類あります。
それは、「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」です。概要をご紹介します。

3-1.取引事例比較法

「取引事例比較法」は、類似の不動産がどのくらいの値段で取引されているのかに着目した計算方法です。
分譲マンションや更地などは、主にこの手法で計算されます。
例えば、鑑定・査定したいのが分譲マンションの一室の場合には、同じ建物内の居室や、近くの同じくらいのグレードのマンションの取引価格が算出根拠になります。

3-2.原価法

「原価法」は、その建物の建設費がいくらなのかに着目した計算方法です。
年数の経過によって、建物の価値は少しずつ減ってくるという考え方をします。
一戸建ての建物部分の値段を鑑定・査定するときなどに原価法が使われます。
例えば、新築時の建築費は2千万円だけれど、現在は築10年だから価値は●%くらい減っている・・・というように算出します。

3-3.収益還元法

「収益還元法」は、その不動産からどれくらいの収益が得られるのかに着目した計算方法です。
投資用のワンルームマンションや、一棟アパート、貸店舗などの値段を出すときに使われます。

4.よくある3つの疑問

「鑑定評価」や「査定」に関してよく寄せられる疑問をご紹介します。

4-1. 売買のときには「鑑定評価」を取得したほうが有利?

売買の際に、「鑑定評価を取得したほうが高く売れる」といった効果は期待しにくいです。
鑑定評価額で取引しなければならない義務はありません。

ただし、公正な値段で取引するためなら、鑑定評価は役に立ちます。
相場がわかりにくい不動産を、安すぎる値段で取引してしまうと、後で贈与税の課税対象になってしまう恐れがあります。
逆に高すぎる値段で取引した場合、やはり税金関連の問題が生じたり、人間関係のトラブルも起きるかもしれません。

4-2.「鑑定評価」の費用はどうやって決まる?

鑑定評価書の費用(手数料・報酬)は鑑定事務所がそれぞれ独自に決めているので、会社によって異なります。
また、対象となる不動産によって違います。
例えば、住宅地の中の50坪程度の土地なら、15~25万円くらいの鑑定事務所が多いです。
一戸建て(土地と建物)の場合は、20~40万円くらいが一般的です。
一方で、ゴルフ場、超高層ビル、賃料の鑑定などは100万円以上になる場合もあります。
そのほかにも、権利関係が複雑な場合や、土地の筆数が多くて面積が広大な場合、裁判所に提出する場合などは費用が高めになりやすいです。

なお、鑑定費用をできるだけ抑えたいときには、年末や年度末などの鑑定事務所の繁忙期を避けたほうがよいと思います。
毎年、定期的に鑑定評価を依頼する場合や、複数物件をまとめて依頼する場合にも割引が受けられるかもしれません。
鑑定評価の費用はケースバイケースなので、まずは鑑定事務所に見積りを依頼してみてください。
一般的に見積りは無料で、鑑定評価の依頼書を提出してから鑑定評価の作業がスタートします。

4-3.不動産会社に「無料査定」を依頼するときの注意点は?

不動産の売却を予定していて、不動産会社に査定を依頼するときには、高い査定額を出してもらうのが目的と考えないようにしてください。
査定額はあくまでも「売却見込み価格」なので、査定額で売れるとは限りません。

いくつかの不動産会社に査定を依頼したときに、極端に高い査定額を提示してきた会社には、ちょっと気を付けたほうがいいかもしれません。
高く売る特別なノウハウがある可能性もゼロではありませんが、「自社を選んでもらうために極端に高めの査定額をつけて、売り出したあとに色々と理由をつけて値下げさせるつもり」とか、「査定のノウハウが足りない」といった可能性もあります。

不動産会社への査定依頼は、信頼できる不動産会社かどうか見極めるための「手がかり」です。
信頼できそうな不動産会社を見つけるためには、
・なぜその査定額が付いたのか
・どのくらいの期間で売れそうなのか
・リフォーム、修繕が必要か
など不明点をいろいろと質問してみてください。
担当者の経験や知識は十人十色で、とりあえず知名度のある不動産会社ならいいというものでもありません。
いくつかの不動産会社に相談した上で、納得できる・信頼できると感じた会社に仲介を依頼することをおすすめします。

まとめ

「不動産鑑定評価」は、不動産鑑定士が有料で行うもので、適正価格を第三者に示す書類です。
不動産の「査定」は、不動産会社が無料で行うもので、売却の見込み額を知るためのものです。

一般的な個人住宅の売買ならば、鑑定評価が必要なケースは少ないです。
いくつかの不動産会社に査定を依頼してみた上で、「最も高い査定額をつけてくれた会社」ではなく、「信頼できそうな不動産会社」を選ぶことをおすすめします。

相場がわかりにくい特殊な不動産の売買や、関連会社間の売買、相続、離婚、低額での譲渡など、鑑定が役立つケースもあります。
無料でお見積もりしますのでまずはご相談ください。

こちらの記事もぜひご参考にしてください。「不動産鑑定の費用はいくら?相場と料金表【よつば不動産鑑定】」

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