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一括借り上げ・サブリース契約の仕組みとトラブル 【不動産鑑定士が解説】

アパート経営

アパート経営で避けて通れないのが空室問題です。
空室の不安を解消する策のひとつとして、一括借り上げ(サブリース)があります。
アパートのサブリース契約とは、不動産会社などがオーナーからアパート一棟まるごとを借り上げて、不動産会社から個々の入居者に居室を貸し出してくれる仕組みです。

サブリース契約は、「空室が発生しても一定の賃料を受け取ることができる」「管理をすべて任せられて手間がかからない」という利点もありますが、一方でトラブルが多いのも特徴です。
「相続対策でアパートを建てませんか、一括借り上げなので安心です」といったセールストークを受けてアパートを建築後、トラブルになって後悔されているオーナーさんが後を絶ちません。

サブリース契約を結ぶなら、リスクをよく理解し、できる限りトラブルが起きないように契約内容を吟味する必要があります。
2020年にはサブリース新法が施行されたため、以前よりも不当勧誘は減っているはずですが、慎重な判断が必要なことは変わりません。
この記事では一括借り上げ(サブリース)の仕組みとトラブル例、メリットとデメリット、検討するときのチェックポイントについて詳しく解説していきたいと思います。
あなたのアパート経営においてサブリース契約を選ぶべきかどうか判断材料にしてください。
また、サブリース契約を結んで減額請求を受けてしまい、本当に賃料相場が下がったのか悩んでいる方は、別途ご相談ください。

1. 一括借り上げ(サブリース)の仕組み

初めにサブリースの仕組みと、「空室保証」との違いなどを見ていきます。

1-1.一括借り上げ(サブリース)の仕組み

アパート経営の一括借り上げ(サブリース)とは、不動産会社(サブリース会社)がオーナーから物件を一棟まるごと借り上げた上で、サブリース会社から入居者に部屋を貸し出す仕組みのことをいいます。
正確に言うと、オーナーとサブリース会社が締結するのは「マスターリース契約」で、サブリース会社と入居者が結ぶ契約が「サブリース契約」(転貸借、又貸し)なのですが、この仕組みをまとめて「サブリース契約によるアパート経営」などと呼ぶのが一般的です。

サブリース会社はオーナーと建築請負契約を結んでアパートを建築した上で、賃貸借契約を結んでアパート一棟を借り上げし、物件の管理業務全般を行います。
オーナーがサブリース会社から受け取る家賃(サブリース賃料)は、立地によっても異なりますが、市場家賃の85~90%程度で契約するのが標準的です。
サブリース賃料は、空室があるときでも満室のときでも一定額を受け取る契約が大半ですが、変動型の契約もあります。
市場家賃とサブリース賃料の差額部分は、サブリース会社の受け取る管理手数料や空室損失を補填する対価にあたります。

1-2.トラブル多発のため「サブリース新法」施行

サブリース契約では、過去に様々な契約トラブルによる訴訟が起きています。
「30年一括借り上げなので賃料は変わりません」と説明を受けてアパートを建てたのに、実際には途中で賃料減額請求されたり、適切なメンテナンスを行ってもらえなかったがオーナー側から解約させてもらえなかったり、逆にサブリース業者側から一方的に解約されてしまったなどの例があります。

サブリース契約のトラブルを防ぐため、2020年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(通称:サブリース新法)が施行されました。
サブリース新法では、誇大広告や不当な勧誘が禁止され、契約内容を十分に説明することが義務付けられました。

1-3.サブリースと「管理委託」の違い

「一括借り上げ(サブリース)」の場合、オーナーはサブリース会社と賃貸借契約を結び、サブリース会社から一定の賃料を受け取るというのが特徴です。
オーナーは個々の部屋の入居者とは契約を直接結びません。

一方の「管理委託」は、一般的に最も多く利用されているアパート管理方法です。
「管理委託」の場合、オーナーと入居者が賃貸借契約を交わし、オーナーは入居者から家賃収入を得ます。
その上で、物件の管理業務を管理会社に委託し、家賃の3~5%程度の管理手数料を支払います。
オーナーから入居者へ部屋を貸し出すので、稼働率が下がると収入も下がり、満室に近づくほど収入がアップするというように収益は変動します。

1-4.サブリースと「空室保証」の違い

「一括借り上げによる空室保証」とは別の、「空室保証」と呼ばれるサービスもあります。
「空室保証」は、管理委託方式を採用する際に利用するもので、保証会社に保証料を支払えば、空室が発生しても収入を一定割合まで補填してもらえます。
保証額は満室賃料まで補填されるとは限らず、80~90%程度が一般的です。
「一括借り上げ」「空室保証」ともに、空室リスクを軽減できるので安心できますが、稼働率が良い物件だとメリットがないことも考えられます。

なお、似たような用語ですが、「滞納保証(家賃保証)サービス」は入居者が家賃を滞納したときに保証する仕組みです。

2. サブリース契約のトラブル例

サブリースに関しては過去に様々なトラブルがあり、オーナーがサブリース会社を訴える訴訟も多数起きています。
どのような事例があるかご紹介します。

2-1.【ケース1】サブリース家賃が下がるなんて知らなかった!

近年多発しているのが、契約時の賃料が30年間ずっと同じまま保証されると思っていたのに、入居者募集賃料が下がったと言って、サブリース賃料が一方的に減額されてしまいトラブルになったという事例です。
「30年一括借り上げ」の契約は、「30年間絶対にサブリース賃料が変わらない」という意味ではありません。
賃料相場や経済情勢が変われば賃料が見直される契約になっているのが普通です。
それなのに、アパート建築の時点では、「30年固定賃料です」といった説明を受けているケースは多いです。

また、契約書に賃料の見直し条項が記載されていなかったとしても、賃料の減額請求の裁判になれば基本的にオーナー側が不利です。
なぜかというと、サブリース会社は「借主」として借地借家法で保護される立場になるためです。
賃料相場が下がったなら、サブリース会社は借地借家法に基づき、賃料の見直しを請求できます。
実質的には、個人のアパートオーナーよりも大企業のサブリース会社のほうが優位にもかかわらず、借地借家法ではサブリース会社が弱者の借主とみなされてしまうのです。

入居者の募集賃料が下がったとき、サブリース会社はオーナーに支払うサブリース賃料を下げれば損がありません。
そのため、積極的な入居者募集活動や適切な管理業務を行っていれば高い収益が望めたのに、適切に管理を実施せずに空室が出たら簡単に家賃を下げて入居者を集めてしまうような悪質な企業もあります。
アパートの立地が良い場合はサブリース契約を解除して、一般的な管理委託に変更したいと考えるかもしれませんが、オーナー側の都合での中途解約は難しいのが現実です。

2-2.【ケース2】サブリース会社から簡単に解約されてしまった!

次に取り上げたいのが、サブリース会社のほうから解約されて、空室だらけのアパートとローンが残ってしまうという事例です。
サブリース契約では、オーナーからの中途解約は難しいけれど、借り主であるサブリース会社からは1ヶ月前に催告すれば簡単に解約できるといった内容が一般的です。

そもそも最寄り駅からも遠く、アパート経営は難しいのではないかと誰もが考えるような場所に、「一括借り上げだから安心ですよ」と勧誘してアパートを建てさせる悪質な例もあります。
この場合は建築請負代金で収益を上げることが目的ですから、しばらく経つと想像通り空室だらけとなり、サブリース会社からは解約されて途方に暮れてしまうのです。

3. サブリースのメリット・デメリット

サブリース契約には良い点もありますが、様々なデメリットがあることは無視できません。
サブリース契約の締結を検討するなら、メリットとデメリット(リスク)の両方を知っておくことが大切です。

3-1.サブリースのメリット

(1)一定の収入が得られる

サブリース契約なら、空室の発生を心配する必要がなく、安心してアパート経営が始められるのがメリットです。
ただし、空室が心配な場合はサブリース契約でなくても、管理委託契約と家賃保証のしくみを利用して空室リスクを減らす方法はあります。

(2)管理の手間がかからない

サブリース契約を利用すれば、入居者との賃貸契約・家賃回収・維持管理などをサブリース会社に任せることができ、経営する上での手間がかからず、経営のノウハウも不要です。
また、収支もわかりやすいので確定申告が簡単です。
ただしサブリースでなくても、管理業務全般を管理会社に委託すれば、オーナーの手間を減らすことは可能です。

3-2.サブリースのデメリット・リスク

(1)満室稼働でも8割~9割の収入しかもらえない

サブリース契約では、たとえ満室が続いたとしても、市場賃料の8割から9割程度の家賃収入になってしまいます。
立地が良いなら、しっかりと競争力のある物件を建てて管理委託するほうがオーナーにとって有利な場合があります。

(2)サブリース賃料が下がる可能性がある

サブリース契約では、「経済事情の変動や賃料相場の変動があれば、サブリース賃料も見直しされる」といった内容が一般的です。
賃料見直しを契約で定めていなくても、賃料減額請求を受けて裁判で争った場合、減額が認められてしまう可能性があります。

(3)入居者からの礼金や更新料がオーナーのものにならない

サブリースの場合、入居者はオーナーからではなく不動産管理会社から借りている形になります。
そのため基本的に入居者の支払う礼金、更新料は全てサブリース会社のものになるのが一般的です。
サブリース賃料が市場賃料よりも低いというだけでなく、礼金等の一時金を受け取れないことによる収益性低下も意識する必要があります。

(4)免責期間がある

サブリース契約では、新築後の数ヶ月や、入居者が退去した後の一定期間は「免責期間」とされ、一定の賃料が保証されない契約も見られます。
免責期間があるために適切な入居者募集活動が行われず、本来は得られたはずの収益性が損なわれる可能性があります。

(5)修繕費が割高な可能性がある

サブリース契約では、建物の修繕工事を行う際に、サブリース会社の指定する工事会社から変更できない契約も見られます。
サブリース会社の関連会社等が指定されており、オーナーは相見積もりを取って安い工事会社を選ぶ余地がないため、相場よりも割高な工事費用を請求されるケースもあります。
修繕の内容やタイミングもサブリース会社しだいになってしまいます。
サブリース契約の締結と同時に、修繕費を積立する契約を結ぶ場合もありますが、不足すれば追加でオーナーの負担が発生する可能性もあるので注意が必要です。

(6)中途解約できない

サブリース会社は「借主」として借地借家法で守られるので、オーナー側からの解約は簡単ではありません。
オーナーからの中途解約が認められるのは、サブリース賃料の不払いや、契約を終了させる「正当事由」があるときに限られます。
場合によっては「立退料」を支払う必要があったり、オーナーからの中途解約に高額な違約金が発生する契約となっていて実質的に解約できないこともあります。

(7)サブリース会社が倒産するリスクがある

2018年に発生した「かぼちゃの馬車」事件では、シェアハウスを建設してサブリース契約で運用する会社が倒産し、サブリース賃料が未払いとなって多数のオーナーが多額の負債を抱えてしまいました。
この件では、建築費が相場よりもかなり高く設定されていた上に、金融機関が融資審査の不正を行ったこともあり、被害が拡大しました。
会社の財務体質の健全性と合わせて、賃貸住宅の品質や建築費の妥当性も見極めることが大切です。

4. サブリース契約を検討するときの3つのチェックポイント

サブリース契約を締結するかどうか迷っている場合は、次の3点にご留意ください。
・そもそもサブリースが必要かどうか検討する
・サブリース契約の内容を詳細に点検する
・サブリースで経営するならパートナーを慎重に選ぶ

4-1.そもそもサブリースが必要かどうか検討する

アパートとして立地の良いエリアならサブリース契約は必要なく、一般的な管理委託方式で経営した方が有利です。
サブリースにするかどうか、メリット・デメリットを慎重に検討してみてください。
空室リスクが心配なら、サブリースではない管理委託方式で利用できる「家賃保証」を使う方法もあります。

4-2. サブリース契約の内容を詳細に点検する

サブリース契約締結の前に、オーナーにとって著しく不利な契約になっていないか、契約内容を詳細に点検することが大切です。
不安な場合は弁護士等の専門家にサブリース契約の内容をチェックしてもらうのも一案です。

サブリースに関するトラブルの防止に向けて、国土交通省が次のような注意喚起を公表しているのでご参考にしてください。
金融庁・消費者庁・国土交通省によるサブリース契約注意喚起

サブリース賃料については、周辺エリアの賃料相場の何割程度になっているか確認してください。
複数の不動産会社からの提案を受けてみて、賃料の妥当性、建築工事費の妥当性、契約条項、設計プランの内容を比較検討してみるのも有用です。

4-3.サブリースで経営するならパートナーを慎重に選ぶ

サブリース契約には上述のとおり、様々なデメリットがあり、いったん契約を結べば簡単に解約することができません。
サブリース会社から見ると、建築費の売り上げを得た上で、毎月の安定した収益源となり、さらに修繕でも稼げるチャンスがあるという「3度おいしい商売」です。
不動産投資には、パートナー企業を見極める目が必要です。
サブリースでアパート経営をするなら、基本的にはサブリース会社が儲かる仕組みになっていることを理解した上で、オーナーとサブリース会社の双方にとってプラスになるような企業を見つけなければなりません。

サブリース会社が管理している物件の入居率や評判を確認し、経営状態が安定している企業を選んでください。
また、良心的な企業を選ぶために、事業計画にはしっかり目を通すことが大切です。
なかには手取りを多く見せようとして経費の部分を明確にしない悪質な企業もあります。
そのような業者に気づくためにも、いくつかの建築会社から提案を受けて内容を比較したり、現実的な事業計画になっているか、賃貸経営に詳しい第三者に事業収支計画をチェックしてもらうと安心です。

【事業収支計画のチェックポイント】

・収入から経費を差し引いた手取りは実際にどれくらい残るのか、キャッシュフローを把握する。
・毎年の固定資産税や火災保険料、軽微な修繕費のほかに、15年に1回程度の大規模修繕費も見込んで事業計画が立てられているか。
・サブリース賃料がいくらか下がった場合でも、ローンの返済は可能か。
・万が一、業者側からサブリース契約を解約されても賃貸経営が成り立つのか。

まとめ

サブリース契約によるアパート経営は、賃料が安定して手間がかからないというメリットがあるものの、トラブルが多いため社会問題になっています。
サブリース賃料が市場賃料よりも低いだけでなく、礼金等を受け取れない、免責期間がある、修繕費が割高な可能性、中途解約が難しいといったデメリットに注意が必要です。
そもそもサブリース契約が本当に必要なのか検討した上で、もしもサブリースで経営するなら契約内容やパートナー企業を慎重に吟味してください。

なお、相続対策で不動産経営を検討していらっしゃる場合は、こちらの記事もご参考にしてください。
コラム「相続対策の不動産購入はデメリットが多いので慎重に」

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